フラダンスの「フラ」とは、ハワイの言葉で「踊り」を意味します。
ですから、「フラダンス」は「ダンスダンス」となり、変といえば変ですが、「チゲ鍋」も「鍋鍋」くらいの意味になりますから、それほど気にすることもないでしょう。
ハワイの伝統芸術として知られているフラダンスですが、一時はその伝統が絶えかけました。
いかにして復活をとげ、そして世界に広がっていったのでしょうか?
■フラダンス存亡の危機
神社で祝い事があると、神主が祝詞をとなえ、巫女さんが踊りを捧げていますが、フラダンスも元々は自然の神々に捧げる踊りでした。
隆盛を誇っていたハワイ王国ですが、1779年にジェームズ・クック船長がイギリス王国から到来し、浸透と同じく多神教的な起源を持つフラダンスを禁止します。
元々は口伝による伝承だったフラ及びハワイ文化が書物で残されますが、キリスト教の浸透もありフラダンスはだんだんと衰退していきます。
(今でこそフラダンスの露出度は問題視されませんが、当時のキリスト教文化圏では、異教的で扇情的な未開文化として扱われていました)
しかし、ハワイ文化の継承に危機感を抱いたカラカウア国王が、固有文化の復興に務め、また同時にフラダンスの現代化もなしとげます。
・フラ・アウアナ
一口にフラダンスといっても、フラ・アウアナとフラ・カヒコの2つに大別できます。
フラ・アウアナは、現代的な要素も取り入れたフラダンスのことです。
フラ・カヒコにある定型的な踊り(足と手を横方向に投げ出し、座った状態で上下運動する箇所など)や、ハワイ語の祝詞などを排し、比較的自由な表現が可能です。
また、なんとなくハワイとフラダンスといえば髪に飾る花が有名ですが、あれはアウアナでしか付けられません。
カヒコだと、決まった植物で輪っかを作る必要があります。
・フラ・カヒコ
フラ・カヒコは、元々神前へ捧げる踊りだったころの厳格さを色濃く残している保守的なフラダンスです。
しかし、元々フラダンスは男性のみ踊ることを許された踊りだったのが、今では女性も踊るようになっていますから、それほど厳格に守られているわけではありません。
カヒコのダンサーは、レイと呼ばれる植物の輪っかをつくります。
厳密にはハワイの特定の場所からとれるものしか認めないはずですが、そこは大目に見られております。
フラの師匠であるクムがチャントを歌いながら、祭壇に奉納されます。
■ハワイのナショナリズム
ハワイがアメリカの他の州と違う点として、人口の半分以上が混血であること、非白人が多数を占めることです。
しかし、ネイティブのハワイアン(ポリネシア系)は既に少数派で、アジア人が多数派を占めています。
アロハシャツは起源をたどれば日系人に辿れますし、ウクレレに至ってはスペインの楽器です。
また、ハワイで人気の「スパムむすび」に至っては、アメリカ軍の食物と日本料理の融合。
ハワイ語の話者数も危機に陥っており、「消滅危機言語」に指定されています。
ハワイにナショナリズムは、そもそも多文化の融合したクレオール的な文化なので難しいでしょうが、
アジア系が多数であり、
アジア系及びポリネシア系の人間に対する差別が少ないこと、
また、ハパと呼ばれる混血への差別の少なさから(そもそも多数派)、
マルチカルチュラリズムの定着地としては残っていくでしょう。
フラ・カヒコの神前へ捧げる祈りも、コマーシャル化され観光のための踊りになってしまったと嘆く方も少なくありませんが、ハワイが特異な場所であることに違いはなく、アメリカ全土で同じ風習・文化に染まるよりは、形だけでも固有文化を継承させることに専念したカラカウア国王のための願いが叶えられていることでしょう。
■フラダンスと日本
「映画フラガール」以前から、日本ではフラダンスが定着していました。
フラダンスが人気なのは、ハワイという土地のコンテンツパワーはもちろん、ダンス経験がなくともはじめられること、大会にでるわけでもなければ、体力を使うダンスを必要としないことなどです。
また、ウォーキングなどを友だちと続けるよりかは、友達と一緒にフランダンスをして運動をするほうが楽しいに決まっており、そこも人気の理由の一つです。
フラダンスといえば腰の動きが有名ですが、ブレイクダンスほど運動量は多くないにしろ、上半身や下半身を固定したままでの腰の動きが要求されることもあり、本格的にやればそれなりの運動量になります。
(事実、メリーモナークフェスティバルの参加者などは、皆筋骨隆々の体をしています)
■まとめ
フラダンス(フラと呼んであげると、関係者は喜びます)を一言でいうと、ハワイを代表するものです。
タスマニアンダンスやハカなど、ポリネシア系の住民はそれぞれに固有のダンスを持ちますが、起源を皆おなじくしています。
ハワイ周辺の文化を眺めてみて、文化の細かな違いなどに注目しても面白いでしょう。
ハワイだけがポリネシア・サモアではありません。