“芸能人”なるワードは比較的新しい概念です。かつては役者・芸人・落語家など、個別に割当されたコンセプトで言及されていましたが、まとめて「芸能人」と、呼ぶようになりました。
「芸もないのに何が芸能人だ」なる批判がありますが、英語圏でCelebrity=名士・高名な人が、日本で言う「芸能人」を指すのと同じように、慣習的なものです。「芸」や「芸能」なる単語に焦点をあて、そこから本質を描いていく営みに意義はあまりありません。
「芸人」なるワードも同じことが言えて、番組に呼ばれて映像の感想を言うだけの人を「芸人」と呼ぶことに抵抗感を覚える人もいることでしょう。
また、芸能人=テレビタレントと現在の認識ではそうなっていますが、芸能人・芸人の活躍の場はテレビだけではありません。
そのなかでも代表的な仕事「営業」について、今回は詳しく解説していこうと思います。
営業とは
テレビで見なくなった芸人の多くは生活に困窮していますが、全員がそうではありません。
彼らの多くは「営業」で食いつないでいます。
(デビット伊東さんなど、実業家として活躍されている方もいらっしゃいますが、彼らは例外です)
また、テレビ出演にそれほど興味を示さない方も多くいらっしゃいます。
典型的な営業は、企業の忘年会などでネタを披露する、特殊遊技場でゲームをプレイし、ビンゴ大会をするなどです。
特殊なものでは、コンビニの商品を一緒に売るといったこともありますが、例外となっています。
営業人気芸人ランキング
では、営業で人気なお笑い芸人を紹介します。
1.テツandトモ
あるテレビ番組の2013年のデータですが、テツandトモさんは年間に154本の営業に行かれています。
テツandトモさんと言えば「なんでだろう」の歌ネタが有名ですが、歌ネタを各地方ごとに内容を変えたり、なんでだろうを方言仕様にしたりして、細かなバージョンアップをするところも営業人気の一つです。
また、動き回ったり飛び回ったりしている芸風から、「教育に良い」と判断され、小学校・幼稚園の営業に二年連続で呼ばれたりすることもあるそうです。
2.どぶろっく
こちらもテツandトモさんと同じく歌ネタの方です。理由は明らかになっていませんが、歌ネタの方とモノマネの方は営業でウケやすい傾向にあります。
(漫才とコントだと、漫才のほうがウケやすいそうです)
ただ、テツandトモさんと違い、どぶろっくさんの歌う内容はきわどい内容が多く、とても小学校やイベントの営業先には向いていません。
ただ、関西地方でCM起用されたのをきっかけに、関西で営業の仕事がふえ、2013年には162本の営業にいってらっしゃいます。
営業ではわかりやすさが重要だとされています。例えばイオンモールのようなところで、ボソッと面白い発現をしたとしても、誰も聞いていません。
大きな動きや歌(はっきりした発音)でないと、営業で食べていくのは難しそうです。
3.ナイツ
前述した二組とは違い、ナイツさんは主に浅草の演劇場で立たれています。その浅草での活躍を「営業」にカウントすると、おそらく一年に600回を超える回数になりますが、純粋な「営業」だと70本程度です。それでも月に平均6回は外に出向いているのですから、忙しいことに間違いはありません。
ナイツさんの場合は、イベントや企業のPRイベントではなく、純粋に余興や忘年会などの出し物で活躍されています。
わかりやすい動きや歌ネタはないですが、確実に積み上げてきた「面白い」という評判から、高い営業回数に繋がりました。
マネをするのも難しいでしょう。
4.トレンディエンジェル
2010年代前半はそうでもありませんでしたが、後半になってメキメキと営業本数を増やしてきたのがトレンディエンジェルです。
2019年、吉本興業の”闇”営業問題が取り沙汰されましたが、闇営業は本来「会社を通さずに行われる直営業」を意味するのであり、反社会的勢力とは関係がありません。
トレンディエンジェルの場合は、闇営業(直営業)でコンビで二人を呼ぶなら10万円で、ネタは10分間だそうです。
この額は吉本を通す営業とあまり手取り額は変わらないらしいので、仮に5万円(10万円をコンビで分割)を年に10回あるとすれば、それだけで50万円になります。
トレンディエンジェルにあるのは、わかりやすさです。頭の毛が薄いことから離れずに、システム化してツギツギとボケを繰り出すその様は、老若男女に人気があります。
5.ハイキングウォーキング
テレビで彼らが売れっ子だったころ、最高月収が250万円だったそうですが、現在でも60万円~90万円をキープしているとのことです。
これも、ハイキングウォーキングは営業本数が多く、それも内容はネタに限らず
「マラソンの給水場で選手を応援する」
「紅葉狩り」
など、多岐にわたっています。
ロンドンブーツ1号2号の田村淳さんが、結婚式の司会・プロデュースで仕事をなさっていますが、どちらかというと「タレント業」にイベント業としての仕事を追加したことでもあります。
まとめ
そもそも、「芸人」という職業の活躍の場は、ラジオの登場以前は舞台上にしかありませんでした。そこから、ラジオ・テレビ・インターネット放送と活動の場がどんどんと広がっていき、「芸人」とは何なのか危ういところまで来ています。
営業で人気になるためには、お金を払って見に来たお客さんを楽しませる技術が必要です。華やかな仕事ではありませんが、浮き沈みのあるテレビ仕事と違い、安定しやすいのが強みと言えるでしょう。